『W/P』。戦争専門職。
 世界の細分化、人口の減少と共に出現した新しい戦争形態において活躍する兵士。


 今や国家は分裂と独立を繰り返し、地上にある国家数は数千を数える。国の増加と反比例するように、人口は極端に減った。
 度重なる独立運動、民族問題、宗教問題により戦争が多発、その為の核の乱使用。結果として、現在地球上に人類が居住可能な地域は全体の2パーセント程である。

 それによる犠牲は多く、2100年には人類の総人口は四億を切った。
 例外として、核による汚染から逃れるためのシェルター都市では人口過密に喘いでいる。

 国家数の増加と国家の規模の縮小は戦争の形態を変えることとなった。
 圧倒的大国が存在しない今、国の力は低いレベルで並んだ。もはや国は以前の都市と変わらない程度の大きさである。

 そんな中、旧戦争形態で戦うのは狂気の沙汰だった。互いの国が、文字通りに消滅する。

 それでも争いの絶えることが無い人類の愚かさには感心するべきか。
 苦肉の策として、国家は戦争の規模を縮小――戦争専門職による戦闘に置き換えた。

 同数の『W/P』達を戦わせ、より多く生き残った方の国が勝利する。戦争を、個人のレベルまで引き下げ、簡略化した。頻発して行われる『戦争』は、一般市民には全く影響を及ぼさない。
 大型兵器は徹底的に排除された──地球滅亡の一番大きなファクターとみなされたのだ。
 戦場は、シェルター都市の外が指定されるのが通例である。

 まるでスポーツのように規格化された、この戦争の審判役は一体誰か?
 それは宇宙空間に浮かぶ、『平和維持衛星』――第二の太陽、『フランシーヌ』である。

 各国が団結して製造したこの自動制裁装置は、『戦争』においての不正、あるいは巨大兵器の存在を確認すると、世界会議の承認を経て直ちに起動する。
 具体的には当該国家へ向かってレーザー光線を発射し、国土を消滅させる。
 厳しい処置は、旧世界の戦争による人類滅亡を防ぐためには合理的と判断された。古代の伝承、ユリシーズの例えもある。
 時に、人は自らを縛らなければ大局的な正しさを手に入れられない。

 ゲームになった戦争。チェスの駒が、戒史や月たちだ。

 『W/P』の役割というのは多大に重要である。その国の兵器、戦力がそのまま『W/P』と言って良い。
だが、なり手が少ない。
 従って、『W/P』になる人間というのは、特殊な事情がある場合が多い。

 大金が必要な者、罪の軽減を志願する者が大半を占めている。あるいは、どこかの国からの逃亡者や、孤児を引き取って『W/P』にする場合もある。

 利益がなければ、『W/P』になる人間などいない。
 その上『W/P』は、意思があっても、力量がなくては使えない。弱い駒を頭数に数えてはゲームに負ける。

 『W/P』は貴重である。
 貴重な消耗品である。

 この、数十人だけが命懸けの『戦争』に、国家の命運が託されている。










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