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「抵抗しないんだねー?」
「問題ない」

 月はとても落ち着き払っていて、戒史の構えている銃など、見えてもいないようだった。

「問題、ないー?死ぬのにー?」
「お前にそうする気があるなら、俺はもう殺されている」

 戒史は気の抜けた顔で銃を降ろした。
 ざ、と足元の霜を蹴り付ける。

「つまんないなー」
「何故?」
「見透かされてんじゃんー?」

 ふ、と月が初めて表情のような物をその顔に浮かべた──戒史にはそんな気がした。

「それは仕方がない」
「なーんでさー?」

 月は戒史の方に歩み寄り、その手から優しく銃を奪った。
 戒史は何の抵抗もせず、素直にそれを渡した。

「俺とお前は似ている」
「成る程ねー」

 くるりと滑らかに反転し、自分に向けられた銃口を見て戒史は頷いた。
 月の顔にはやはり何の表情も浮いていなかった。先程の感じたものは、錯覚だったらしい。

「納得」

 戒史も敵にはそうする。
 暗い空に銃声が響いて、そのまま消えた。










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